クラスメイトの告白。



「おはよ~。風杏~」


久しぶりの教室に入った途端、クラスメイトたちの挨拶が次々に飛んでくる。


「おはよう」


「ひさしぶり~風杏。夏休み何してたの?」


「受験勉強とか、かな」


「勉強ばっかりしてたの? だから息抜きに、ムーンライトのライブ行こうって誘ったのに~」


「えへへ。でもチケット当選してよかったね」


「うん。今年の運、ぜんぶ使い終わったかも~」


クラスの女子の話題は、夏休みが明けてもムーンライトのことばかりだった。


夏休み中にあったムーンライトのライブツアーに参加した女子たちもいるし、彼らの人気はいまだ衰えることを知らない。


「ヒカルの生歌サイコーだったよね~」


「ホント、かっこよすぎて泣いたよね~」


あいかわらず大人気のムーンライトのボーカル、ヒカル。


「はぁ……せっかくヒカルと同い年に生まれた運命なのに、どうしてうちの高校にはヒカルみたいな男子いないんだろう」


「ヒカルと同じ高校に通いたい人生だったよね~」


「東京の高校って、やっぱりイケメンばっかりなのかな?」


「はぁ~うらやま~」


女子たちの話を聞いていると、ムーンライトのメンバーは東京の高校に通っているらしい。


ムーンライトのほかにも、俳優やモデルなど芸能関係の仕事をしている高校生が多数在籍している高校だという。


同じ高校に芸能人がいるって、どういう感じなんだろう。


芸能人っていうだけで、私とはべつの世界で生きてる人って感じがする。


女子たちがムーンライトの話で夢中になっているなか、私は教室内に彼の姿をさがす。


まだ伊原くんは登校してきていないみたい。