彼は、いっそう強く私を抱きしめる。


「時間が経てば、悲しさとか寂しさとか薄れていくと思ってた。だけど、全然そんなことなくて……いまでもどうしようもないくらい逢いたくなるんだ……」


「伊原くん……」


「逢いたい……」


「……泣いていいんだよ」


「汐野……」


「思いっきり泣いていいんだよ。寂しくて悲しい気持ちも、逢いたくて恋しい気持ちも、我慢したらもっとつらくなる」


「……ん」


「でも、思いっきり泣いたあとは……家族との幸せな記憶を思いだして、また笑顔になってね」


幸せな思い出は、ずっと消えないよ。


伊原くんだけの宝物だから。


「たくさん泣いたら、その分、笑って……。そしたらきっと、星になって見守ってくれてるお父さんもお母さんも、安心すると思うから」