伊原くんはキョロキョロとまわりを見て、誰もいないことをもう一度確認した。 そして彼は、まっすぐに私を見つめる。 ……なんだか、ドキッとした。 こんなふうに伊原くんに見つめられたこと、いままでなかったから……。 「汐野」 ついに、そのときが――。 「俺の……」 私は彼を見つめたまま、言葉を待った。 “俺の彼女になってください” そう言われると思った。 なのに、彼は――。