「べつに、なにも……」


音ちゃんが見ていた下駄箱には、“赤西ありさ”と名前が書いてあった。


赤西さんといえば、2年生のとき白石さんと緑河くんと同じ図書委員。


赤西さんは、白石さんの事故が起きる少し前から不登校になっていると伊原くんから聞いている。


事故が起きた日も赤西さんは学校を欠席していて、図書室でのクリスマス会の準備も、白石さんと緑河くんのふたりでしていたという。


白石さんの事故に、欠席だった赤西さんは関係ないと思う。


でも、同じ図書委員だった白石さんについて何か知っていることはないか、一度は赤西さんにも話を聞きたいと思っていた。


でも2年生の頃から不登校で、いまはときどき保健室に登校しているときもあるらしいけど、なかなか会えない。


音ちゃんは、どうして赤西さんの下駄箱を見つめていたんだろう。


「あ、音ちゃんて2年のときのクラスって2組だっけ?」


「うん」


「じゃあ、赤西さんと同じクラスだったんだ……赤西さんと仲よかったの?」


音ちゃんは首を横に振った。


「1年生と2年生のときに同じクラスだったけど、あまり話したことないの。2年生の途中からは学校も来なくなっちゃったし……」


「そっか……じゃあ心配して赤西さんの下駄箱、見に来たの?」


「たまに保健室に来てるって噂で聞いたから。でも今日は学校に来てないみたい」


「ねぇ……赤西さんが学校に来ない理由って、音ちゃん知ってる?」