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緑河くんから話を聞いた私は、学校からそのまま伊原くんのいるアパートにやってきた。
インターホンを鳴らすと、しばらくしてドアが開いた。
部屋から出てきたのは、濡れた髪をタオルでふいている金髪の美少年。
シャンプーのいい香りがふわっと広がる。
お風呂上がりで上半身は裸だ。
なんで私がここに来るとき、高確率でシャワー浴びたあとなの?
早く服を着てください。
「おかえり」
そう言って伊原くんは、ニコッと笑う。
おかえりって……私の家じゃないけど。
なんでこう、ドキッとさせること言うのかな。
「おじゃまします」
「どーぞ」
「服、早く着てよね」
「風呂から出たばっかで暑い。アイス食う?」
「食べる~! あれ? 伊原くんちに食べ物があるのめずらしいね」
「汐野が来ると思ったから、学校の帰りに買ってきた」
私は部屋の床に座り、彼から桃色のアイスキャンディーを受け取る。
「わーい! ありがとっ」
アイスをひと口かじると、桃の味がして冷たくておいしい。
彼は首にタオルをかけて私の前に座ると、ジッと私の顔を見つめる。
「あいつに何かされなかった?」
「緑河くんに? 何もされてないよ」
「ならいいけど……気をつけろよ?」
そう言って彼は、私の頭を優しくなでた。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
