伊原くんとふたりで本を片づけていると、本棚に寄りかかったままの緑河くんと視線がぶつかる。
「おまえら、仲良しなんだな。意外」
――バサッ。
緑河くんの言葉に動揺した私は、手に持っていた本を床に落としてしまった。
「べ、べつにクラスメイトってだけだよ? それより緑河くんもボーッと見てないで手伝って」
「俺、風杏とふたりきりがいい」
「まーた、そんなこと言って……」
すると緑河くんは、私の耳もとに顔を近づける。
「本当は今日、風杏に話があったんだ」
「話?」
「茉雛のことで思い出したことがあってさ」
「白石さんのこと!?」
私の驚いた声に、本を片付ける伊原くんの手が一瞬止まる。
「風杏とふたりなら話してもいいけど」
「伊原くん、やっぱりあとは私と緑河くんでやるから帰っていいよ」
無言で少しのあいだ私の顔を見つめる伊原くんは、持っていた本を緑河くんに渡した。
「じゃ、帰る」
カバンを持って、伊原くんは帰っていった。
緑河くんとふたりになり、私は彼の顔を見つめる。
「思い出したことってなに? 話して?」
「そのまえにさっきの続きを……」
「緑河くん、いいかげん怒るよ?」
「うそうそ、怒るなよ」
「話して?」
「茉雛の事故が起きる数日前だったと思う……」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
