「そのあきれた感じも、かわいいな」
そう言って緑河くんは、ニコッと笑う。
「本気で言ってんのに」
「ふざけてないで、さっさとやるよ!」
私は抱えている本を1冊ずつ本棚に並べていく。
「この本は、ここでしょ……えーっと、これは……」
ひとりごとをつぶやきながら本を並べていると、いきなりうしろから抱きしめられる。
「ちょっ……! またふざけて……」
「手伝ってくれるお礼に、このあとどっかふたりで行こっか」
「もぉ~なんでそうなるの? 緑河くんも早く本を片付けて?」
「デートしようよ。話もあるし」
「話?」
私は緑河くんの腕をほどいて、体ごとくるっと振り向く。
すると、目の前には緑河くんの顔。
ち、近い……!
後ずさったら、背中が本棚にぶつかった。
緑河くんは左手で私の肩をつかみ、右手で私の頬に触れる。
いつもと違う緑河くんの目。
ふざけていたはずなのに、急に真剣な表情に変わって、私を見つめている。
「……キスしたくなった」
「は、はい?」
「キスしていい?」
「そ、そんなの、だめに決まってるでしょ!」
緑河くんの顔がゆっくりと近づいてくる。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
