三時間目は、自習。出された課題には手をつけず、ずっと考えていた。
いよいよ四時間目。月が綺麗ですねというあの短い言葉には、どんな意味があるのだろうか。
お願いします!ーーお願いします!ーー
ついに始まった。横を見ると、ヨウも緊張気味だった。その時、ついに先生が言った。
「さて、ここでみんなに問題だ。ある人が、好きな人に告白する時に月が綺麗ですねと言った。さて、その人は誰?」
あたまのいいヨウなりの告白だなと思った。問題の答えを聞いてなかったけど、それだけで満足だった。すると、ヨウがここ見て!というようにノートを叩いた。そっと覗いてみると、(分かった?昼休みに屋上で待ってます。返事、待ってるよ。)と書いてあった。
その時、気がついた。帰り道に感じたあの不思議な気持ちの意味を。そうなったら、返事はひとつしかない。でも、こんな私が幸せになっていいのかな。ヨウがこの事実を知ったら、どう思うのかな。そんな不安が一気にこみあげてきた。
昼休みになり、私は屋上へ向かった。ヨウはこちらに気がつくと、歩み寄り、あの言葉を言った。
「月が綺麗ですね。」
むろん、そこに月はない。でも私は確実に見えていた。綺麗な月が輝いているところが。
「はい。とっても綺麗ですね。」
ヨウは一気に笑顔になった。私はその顔を見ただけで嬉しかった。
「これからもよろしく。大好きだよ。ユイ。」
「こちらこそ。大好きだよ。ヨウ。」
本当に、これで良かったのだろうか。私はヨウのことは好きだ。でも、病気のことを知られて、ヨウに迷惑をかけたくない。後悔は残るけど、私はまだ前向きだった。