広いリビングのラグジュアリーな内装には到底似合わないコタツの電源を入れては、またあいつを思い出す。




これだけは、捨てられないな。
コタツの快適さを一度知ってしまえば、もう離れられない。




段々暖かくなってきたところで、帰りがけポストに入っていた新聞と郵便物に目を通す。




いつも通り迷惑なダイレクトメールだらけ、その中に1つ、真っ白な封筒が混ざっている。




あれ?なんだこれ?


ファンレター?


…くそ、住所が割れたのか?




そうだったら面倒だな、なんて考えながら、カミソリなんかが入っていたら困る、と慎重に封を切った。






「あ…」





中からこぼれ出たその紙を一目見て、思わず息をのんだ。





懐かしい、いつだったかの俺のサインが書かれた誓約書に、見覚えのある字で何か書いた付箋が貼ってあった。





[60円。]






彼女のシンプルすぎるその文字を見ただけで、そのセリフを口にするその表情が、その声が、容易に想像できてしまって。





「ハイハイ…俺の完敗ですよ。」






コタツだけは捨てられない、なんて、本当は嘘だ。



もう一つ今も捨てられない、あの懐かしい缶に、10円玉を6枚入れた。




カラン、と鳴るその音が、まるで俺を慰めているような気がして。



図らずも溢れた涙をそっと拭った。




無意識にあの歌を口ずさめば、また気付いてしまう。






俺は君を、好きになりすぎたよ。