『へへ。すごいでしょ?ここ。この家の1番の自慢なの。これ作るために2部屋も潰したんだ~。』
箱か何かをどかしてスペースを作りながら、彼女は言う。
「うん、すごいよ…」
夥しい数の洋服に圧倒され、薄っぺらい感想しか出てこない。
『ん、とりあえずここに置いておいて。あとでもうちょっと片付けて綺麗に並べるけど。』
「ここはきっちり整理整頓されてるんだ?」
リビングは汚かったのに。
『…ここだけは綺麗にしておくって決めてるの。モデルの端くれですからね、お洋服は、大好き。
ユキ君もデビュー前はアパレルで働いてたんなら、興味はあるの?』
「うん…好きだよ。」
『ふーん。じゃあやっぱり、私のクローゼットから色々挑戦してみるべきじゃない?』
そう言うと彼女は、これとかきっと似合うよ~、なんて洋服をいじりだしてしまう。
今朝、服を貸すと提案された時には、さすがに申し訳ないと思っていた。
でも、正直、この空間に足を踏み入れた瞬間から、高鳴る胸を抑えられない。
「…今度、借りてもいい?」
『んふふ。もっちろーん!』
彼女はよく笑うけど、この笑顔は、勝ち誇ったような笑顔。
だから言ったでしょ?なんて。
俺の負けだ。
