…仕事が早いことで。



もう俺たちの報道が出ていた。




今日社長に取り合おうと思っていたが、俺が甘かったらしい。手遅れだ。




『…ごめんなさい。』





声に驚いて振り向くと、いつの間にか狭間が後ろに立っていた。






『嫌だったんでしょ?今回こうやって報道されるの。
…ううん、BLUEの初ゴシップをこんな形で、私のせいで世に出すことになるなんて…私が、嫌だった。』




ソファの空いてる方に回って来て腰を下せば、フカフカの白いカバーにできたシワが少し深くなった。


彼女はかなしそうに笑ってまた続ける。





『ごめんね、やっぱり意見がただのファンで。
でも、もう後戻り出来なくなってしまったなら…私は、ユキ君がいつか、ここで暮らしたことも良い思い出だった、って思ってほしい。しばらくここにいるなら、どうせなら楽しんでよ。』








その笑顔には、何か魔法がかかってるんじゃないだろうか。




俺だけか?




いや、違うだろ。




老若男女を魅了する、スーパーモデルの微笑みは、男を黙らせるのに、1秒もいらない。







そんな風にこっちを見つめられたら、もう何もかもどうでも良くなってしまうんだ。






「…君がずっと思っていたようなBLUEのユキ君にはなれないかもしれないけど。しばらく、よろしくね。」





俺がそう言えば、彼女、今度は無邪気に笑うから。




『んふふっ。なーに言ってんの!ちゃんと思ってた通りの、ユキ君だよ。ほら、これタオルと、私のだけど服ね。下着はとりあえず昨日マネさんがコンビニで買って来てくれたやつ持ってるよね?お風呂はいっておいで!』






だからもう既に、ほとんど、落ちかけていたんだ。




「ん、ありがと」








…恋に。