『ユキ君てほんと、自分のこと、何も分かってないよね。』




ルナはピシャリとそう言って、俺の意識を引き戻す。




『…ユキ君は、良い人です。バカみたいに。』



「バカみたいには余計だよね。」



『じゃあ賭ける?』


「出たよ。」




お前、それやりたいだけだろ?






ルナは俺の話を聞く様子もなく、何やら、紙を探している。






「何書いてんの?」



『んー?…はい、サインして!』




それは。






誓約書


私は、良い人ではないので、狭間ルナのことを庇いません。

もしも庇ったりしたら、賭け金30円を倍にして返します。








「…え、何これ、自分が良い人じゃないって誓うの?」



『え、だってそう思ってるんでしょ?』




ルナは俺にペンを渡して、サインしろと催促する。




「てか別にわざわざこんなことしなくても、普通に…」





そこまで言って、気付いてしまう。




この賭けが成立する頃には、ルナはもう、ここにいないんだ。