『お母さんは勿論断ったわ。自分の娘に同じ運命を見せるくらいなら、この子を誰か遠くに預けて貴方と結婚するって言ったんだって。だから私は生まれてすぐにお父さんに預けられて、お母さんにはずっと会えなかった。

…でも、私の2歳の誕生日を祝いに、お母さんは初めて私達の所へ来てくれたの。私はすっごく嬉しくて、次の日の朝2人を起こしに寝室へ行ったら……お父さんとお母さんは亡くなってたの。』




「え…」




『…自殺だって。』




俺の存在を確認するように手を握るから、もっと強く握りかえした。





『…私、今も覚えてる。2人のお葬式、白と黒の寂しい世界に、優しいおじさんが20本の真っ赤なバラを持って来てくれたの。私にくれるの?って聞いたら、その人、君には欲しい物をなんでもあげるよって。
……それが、お母さんの婚約者の人だった。』




お葬式に真っ赤なバラを持ってくる非常識すぎる人間も、2歳のルナにはどれほど魅力的な人に見えただろう。


そして全ての意味に気付いた時、ルナはどれほど心細かっただろう。