恋愛零度。




2学期になって、よかったのは、席替えで窓際の席になったこと。午後の日差しが心地よくて、ひそかなお気に入り。

休み時間、おしゃべりをするような友達もいない、黙々と本を読んでいるだけの私には、最適なポジションだ。

それなのにーー、

「ねえねえ、この人カッコよくない?」

「昨日彼氏がさあ」

「最近ちょっと気になる人がいてー」

「明日初デートなんだぁ」

女子たちの浮かれた声が、キンキン耳について、しきりに読書の邪魔をしにかかってくる。

なかには、

「彼氏が浮気してて……ううっ」

なんて言いながら泣きだす子までいる。

ほかのところでやればいいのに、心配してほしいアピールが見え見えだ。

女子の会話は、どうしてネタが尽きないのか不思議なくらい、恋愛のことばかり。

誰が好きだとか嫌いだとか付き合ったとか別れたとか告白したとかされたとか振ったとか振られたとか浮気したとかされたとかーー

心の底からどうでもいい。

読書を邪魔わされた私は、小さくため息を吐きながら、ただっ広いグラウンドをぼんやり眺める。

恋愛なんて時間の無駄だし、面倒なだけなのに。

永遠に続くわけでもないそんな感情に、どうしてみんな、そんなに一生懸命になれるんだろう。