それに、私のことを好きになる人なんて、いるはずがない。

そう思ったから、誰だか確認もしないで、鞄に入れたまま帰ってきてしまったけれど。

このきれいな字を、どこかで見たことがある気がした。

でも、やっぱり気のせいだと思う。会ったこともない人の字に見覚えがあるなんて、変だし。

冷静になると、こんなイタズラみたいな手紙で動揺してしまった自分が恥ずかしくなる。

恋愛は面倒、余計な感情。

ずっとそう言われてきたし、実際そうだと思う。

誰かを好きになったって、不安になったり、傷ついたり、落ち込んだり、面倒ごとが増えるだけだから。

だけどーー、

『好きです』なんて、そんなまっすぐな言葉をもらったのは、生まれて初めてだったから。

だからほんの少しだけ、気持ちが落ち着かなくなってしまったんだ。