「それで、高校は絶対この学校に入るって決めた。ここに入れば、毎日でもこの景色を眺められるから」

「え、もしかして、それが理由で決めたの?」

「そうだよ。あと、あわよくば好きな子とこの場所を歩きたかった。いま、その願いが叶った」

さらりとそんなことを言うから、私は返事に困ってしまう。

「真白は?」

と桐生くんが言った。

「え?」

「真白は、なんでこの学校に入ったの?」

「私は……とくに、理由はないかな。しいて言えば、自分のレベルに合ってたから」

私はそう言ったけど、少しだけ嘘もある。

自分のレベルに合った学校なら、ほかにもあった。
でもそこは苦手な子がすでに推薦が決まっていて、わざと外したんだ。

だから、この学校に来たのは、消去法だった。

「しいて言わなくても、正当な理由じゃん、それ」

と桐生くんが笑った。

「そうかな……うん、そうだね」