こんな家で育ったら、恋愛に前向きになんて、とてもなれない。

恋愛なんて、面倒くさいだけ。

そんな感情とは、なるべく無関係でいたい。

それなのにーー、


「真白、なんかあった?」

ふいにお姉ちゃんに言われて、私はどきりとする。

「え、なんで?」

「なんか、様子が変だから」

「そ、そうかな」

ときどき、お姉ちゃんは妙に鋭い。無関心なようで、案外しっかり人のことを見ている。

「なんでもないよ」

そんなふうに言いながら、私は心の中でそっとつぶやく。

ーー男の子から手紙をもらったなんて、絶対に言えないな……。

「ごちそうさま」

私は食器を片付けると、いそいそと逃げるように自分の部屋に引っ込んだ。