変に嘘をついても仕方がないから、

「……ほんとです」

と正直に言った。

「ええええええええまじで?なんで?どういうキッカケ?ていうか、えええええ?」

「千夏ちゃん、うるさい」

渡辺さんが笑顔で言って、クールダウンさせる。

な、慣れてる……。

「あはは、ごめん、ついびっくりしちゃって。だって、あの桐生くんだよ?」

「あのって……そんなに有名なの?あの人」

「えっ、知らないの?」

私はコクリと頷く。

本当に、なにも知らないんだ。

私が彼について知っていることなんて、学年とクラスと名前、それから学年トップなこと。それくらいだ。

「桐生くんて、めちゃくちゃモテるのに、誰が告っても秒速で断られるって有名だよ」

「この前、1年でいちばんモテる東梨花が告白してもダメだったって。もう女に興味ない疑惑まで出てたんだよ。まあそれ、その子が勝手に言いまわってただけなんだけどー」

「へ、へえ……」

次々に出てくる知らない情報に、私は呆気にとられてしまう。

「そんな難攻不落の桐生くんが女子と密会ランチ!大ニュースだよー」

「べつに密会してたわけじゃないんだけど……」

私が1人でいたところに、桐生くんが割り込んできただけなんだけど。