「なんかあったんでしょ」

お姉ちゃんの鋭い視線が、私を捉える。

私は言葉に詰まった。

なにかと言われれば、ありすぎるほどあった。

男の子に告白されて、つきまとわれて、なんだかんだお昼寝を一緒に食べている。

……なんて、お姉ちゃんには絶対に言えないけれど。

「いちおう、心配してるんだけど」

お姉ちゃんがぶっきらぼうにそう言った。

その言葉で、私はふと、懐かしい記憶を思い出す。

小さい頃、私がいじめられていると、奏多とお姉ちゃんがすぐに飛んできて、助けてくれた。

『困ったことがあったらいつでも呼べよ』

『あんな奴らボコボコにしてやるわ』

2人の存在が、心強かった。

それから、奏多がいなくなって、お姉ちゃんも勉強ばっかりになって、バラバラになって……

私は今度こそ本当に、ひとりぼっちになったような気がした。

だけど、自分から話そうとしない私に、お姉ちゃんは決まって、「なにかあったの」と訊いてきた。

……いつも、心配してくれてたんだ。

私はそんなわかりづらいお姉ちゃんの気遣いに感謝しながら、

「なにもないよ」

と答えた。