「お姉ちゃん、ひどいよ……」
いくら男嫌いだからって、いまのはあんまりだ。
桐生くんはただ、心配してついてきてくれただけなのに。
私がちゃんとここまで来れたのは、桐生くんがいてくれたからなのに。
「あんた、あの男と付き合ってるの?」
お姉ちゃんが冷めた声で言う。
「……付き合ってないよ」
「付き合ってもないのに手繋いでたの?」
理解不能、という顔をするお姉ちゃん。
私はなにも答えなかった。
付き合ってもないのにーー
たしかにそうだけど、私を安心させようとして、ずっと手を握りしめていてくれた桐生くんのことを、そんなふうに言われたくなかった。

