彼はゆっくりと階段をのぼってきて、

「やっと会えた」

と嬉しそうに笑った。

「君に言いたいことがあったのに、なかなか会えないから……ていうか、普通に避けられてた気もするけど」

そうです、避けてたんです。

という本音は伏せて、

「なに?」

逃げるのは諦めて、私は尋ねた。

うん、と彼は言って、また一段のぼる。

「やっぱり、直接言いたかったんだ。手紙じゃなくて、自分の口で」

彼の目線が、私の目線と、おなじ高さになる。

黒い瞳、まっすぐな眼差し。

どくん、と、胸の奥で大きく鼓動が鳴った。

「君のことが、好きだって」