「桐生くん」 私はその背中に呼びかける。 心臓がどくどく急にうるさく鳴りだす。 振り向いたその顔を見て、引っ込みかけた言葉を、思いきって押し出した。 「……デート、する?」 「えっ?」 桐生くんが目を丸くした。 ……言った。言ってしまった。 顔が熱くなる。真っ赤になっているのが自分でもわかったから、思わずパッと目を逸らした。