恋愛零度。



「真白は真面目だなー」

桐生くんはそう言って笑った。

「なんでもいいよ。ジュース一ヶ月分とか、一発芸やれって言われたらやるし」

「桐生くんが一発芸?」

思わず笑ってしまった。

それはちょっと、見てみたいかも……。

なんでもいいって言われると、余計に決められなくなってしまう。

テストみたいに、ちゃんと選択肢が用意されているなら楽なんだけど。

お弁当を食べ終えて、予鈴が鳴っても、その日はなかなか、立ち上がれなかった。

ずっと、考えていたことがあった。

肩の力が抜けて、やっと、わかった気がした。

私がしたいこと。

それは、君を傷つけることじゃなくて、たぶん、どちらかといえばーー、

君に、笑ってほしかった。

あのときの、涙の理由は、いまだに訊けないままだけど。

それでも、君はいつだって、私を笑わせてくれるから。

落ち込んでいたとき、前を向かせてくれたから。

本当に、自分の心の変化に自分でびっくりしてるけどーー、

今度は君に笑ってほしいって、そう思ったんだ。