『真白の言うことをなんでもひとつ聞くよ』
そういう約束だった。
なんでも、ひとつだけ。
そう言われたとき、真っ先に思い浮かんだのは、
ーーじゃあ、私のことを諦めて。
そんな最低なことだった。
心を乱されるのが嫌で、予定にないことをするのが嫌で、変化をもたらす対象を、片っ端からはねつけてきた。
少し前の私なら、迷わずそう言ったはずだった。
だけど、その言葉が言えなくて、
「……わからない」
結局、言えたのは、それだけだった。
もし私がそう言ったら、きっと、君を傷つけてしまう。
その顔を見たくなくて、言えなかった。

