「え……?」

家から少し離れたところで別れたはずなのに、見えていたなんて。

「えっと、おなじ学校の……」

「そうじゃなくて、名前」

「名前……?桐生蒼だけど」

他人にほとんど興味を示さないお姉ちゃんが、名前を気にするなんて珍しいと思った。

ふうん、とお姉ちゃんは納得したように言う。

「最近、あんたの様子が変だと思ってたけど、そういうことね」

「えっ?ちがうよ、普通に友達だし」

「べつに、どっちでもいいけど」

え、いいの?

意外にもあっさりした反応に、私は拍子抜けした。
文句のひとつやふたつくらいは覚悟してたんだけど……

「でも、あの顔……」

と、お姉ちゃんが眉をひそめてつぶやいた。

「前にどっかで見たことある気がするんだけど、気のせいかな」