助け出した私を連れて、彼はマンションまで無言だった。

苛立った表情に声もかけることも躊躇われて、助けられた安堵感もどこかへ行ってしまった。

彼らがドアを蹴破り、男達を床に沈めるまではあっという間の出来事で、彼に抱きしめられたまま、それを見ていた。

殴ってくる男の拳を避けて、奏多くんと、陸くんが男2人の腕を捻りあげ、膝裏を容赦なく蹴り膝をつかせる。

「こいつらどうしますか?」

「雑魚だ。離してやれ」

陸くんと奏多くんが仕方ないと手を離したら、男達はヨロッとしながら立ち上がったまま、お互いどうしようかと顔を見合わせていた。

その2人を威圧するように、陸くんがファイティングポーズをすると、逃げるようにこちらに走ってくる。

通り過ぎようとした時、「待て」と透さんの冷ややかな声に、ビクッとして立ち止まった。

「お前たち、俺が誰かわかってるよな」

「も、もちろんです。神崎さんの大事な人だと知らなかったんです。許してください」

「知らなかった?なら教えてやるよ…こいつは俺の女だ。手を出そうとした奴は俺が容赦しないと街の奴らに伝えておけ」

イケメンがすごむととても恐ろしく、彼らはかわいそうなほど怯えて逃げて行った。