急なことに、[lodge]はしばらく休業することになり、透さんは、今までの生活スタイルを変えて、スーツ姿で朝から、どこかへ行き、帰りはお店を閉めていた時間より遅くに帰宅する日々を過ごしている様子。

「ただいま」

「お帰りなさい」

『俺を好きだと言わせてみせろ』と言われたあの日に、彼からもらったマンションの合い鍵で、私は彼の帰りを待つ時間が増えた。

ほぼ、週末は泊まり、半同棲の状況である。

親には、彼氏の家に泊まることは伝えてあるが、おおらかな母と違い、気難しい父親は、多分、よく思っていないだろう。

それでも、彼と一緒にいたいと思い、つい、彼のマンションに来てしまう。

疲れた顔で帰ってくるなり、玄関先でギュッと抱きしめられる。

「お疲れ様です」

彼を抱きしめ返して背中を撫でて労う。

「いい匂い…癒される」

首元に顔を埋め、匂いを嗅ぎまくる透さんの髪が顔にかかりくすぐったくって逃げ腰になると、玄関を入ってすぐの壁に、両手ごと貼り付けられた体勢で、彼は私を見つめる。

「なに?」

「…家に誰かが待ってるっていいな」

相当疲れているのか、らしくないことを言い出した。

そして顔が近づいてきて、唇にキスをされると目を閉じて彼とのキスを堪能する。