愛梨に出会う前の俺なら、あがらうのも面倒で言われるまま駒になってたかもしれないが、愛を知ってしまった今は、駒になんてなってたまるか!

「俺には幸せにしたい女がいる。お袋のようにあんたを待つだけの女にさせるつもりはないんだよ」

『威勢がいいな…あいつにもお前のような意思があれば、不幸にならずに済んだかもしれないな…いいだろう。おままごとは終わりにして、うちで働け。そして自分の力で破棄してみろ。そうすれば、好きな女と結婚でもなんでも好きにすればいい』

「約束だからな…その時は、また、あんたの言う元のおままごとをさせてもらう」

電話を切った俺は、愛梨との未来の為に入りたくもない場所に、足を踏み込む覚悟をした。

その後に、愛梨からの別れのメールに愕然とするのだが、もう、愛梨を手放せない俺は彼女を捕まえる為に、また電話をかける。

「詩織に頼みがある」

『突然、何よ?』

月曜に愛梨をどこかに連れ出すだけでいいと頼み込み、俺の必死さを伝える。

『そこまで必死なら、連れ出すだけしてあげる。でも、私は、愛梨の味方だからね…傷つけるだけなら、許さないから」

「好きな女を連れ戻すだけだ」

『あんたが束縛男だったなんて笑える』

「笑ってろ…側であいつが笑ってさえいてくれれば何もいらない」

その為なら、甘やかして気づかないように囲うまでだ。