「今日は、騒がしくなって、すみませんでした」

「いえ…大丈夫でしたよ」

「そうですか?」

「えぇ、あの席から見える景色はいつも素敵ですけど特に今日は…つい、見入ってしまってましたから…」

「そう言ってもらえるなら、また、あちらのお席をreserveしてお待ちしています」

「ありがとうございます。また、来ます」

その女性が帰る際、私の背後でクスリと笑っていった気がしたが、珍しく、お客と親しそうに話す様子の彼の方が気になって、つい、彼の顔を見つめていた。

「なに?」

「あのお客さんって常連とかですか?」

「あー、週に何回か…あいり、気になるの?」

「…親しそうだったから」

ボソッと言い、そっぽを向いた。

頬杖をついて、その頬を摘む透さんが意地悪に笑った。

「やきもち焼いた?」

「私の気持ちわかってるでしょ…いじわる」

「意地の悪い大人だって言っただろ…」

口角をあげ、悪い男の顔つきに変わった彼は、摘んでいた頬を、淫らな手つきで撫でていく。

「…キスして」

つい、出てしまった声に、『失敗した』『重いよね』と自己嫌悪する。

「俺を好きって言えよ」

「…すきっ」

カウンターから身を乗り出した彼は、甘いキスをくれた。