「大丈夫ですよ。皆さん、美男美人でお似合いだって言ってましたし、また、オーナーのデレた顔を見に来ますって帰って行きましたから、愛梨さん、毎日通ってください」

「余計なこと言う余裕あるんだから、テーブル一人で片付けれるよな」

「うわっ、鬼すか⁈」

すごすごと片付けに行く奏多くんを意地笑く笑う透さん。

「愛梨は、余計なこと考えないで、ただ、俺の為に毎日顔見せに来て」

「透さんの為に?」

「そう…愛梨欠乏症になったら、俺、なにするかわかんないよ。気を失うまで好きって言わせ続けるだけじゃ足りないな」

昨夜の痴態を思い出し、頬がまた熱くなる。

「顔を赤くして、いやらしいことでも思い出した?」

「透さんのバカ」

「あははは…さっきから透さんに戻ってるよ。無理して神崎さんって言うのやめようね」

さっきまで賑やかだった店内は、彼の笑い声が響いていた。

だから、もう、お客は私以外いないと思って気が緩んでいたらしい。

「ごちそうさまでした」

突然、気配もなくレジに立つ女性の声に凄く驚いて、珍しく自分から見てしまったが、清楚な雰囲気の女性は、こちらを気にする素振りもしないで、透さんだけを見ている。

その横顔が、なぜか気になってしまう…