「いらっしゃい」

[lodge]をドアを開けるなり、透さんの爽やかな笑顔が出迎えてくれる。

滅多にカウンターから出てくることのない彼が、わざわざ出てきて、私の腰に手を添えカウンターまでエスコートするという珍しい光景に、テーブル席が少し騒つく。

そんな騒つきが気にならない彼は

「お仕事、お疲れ様」

「とお…神崎さんもお疲れ様です」

「透って呼んでくれないの?」

「他のお客さんが見てますから」

「無理しなくていいのに」

透さんが気にしなくてもこっちは、ビンビン刺さる視線に耐えられるほど、図太くないんですよ。

透さんをジッと見つめた。

「…好きに呼びな」

わかってくれた彼が、カウンターの向こう側に戻るのかと思ったら、なぜか隣に座った。

すると、後ろで悲鳴が出る中、彼は、悪い男の顔をして私の肩を抱き寄せて、耳元で甘い声で囁く。

『抱く時は、透って呼ばせて啼かすから』

思わず、ぶるっと震えた私の頭を撫で、満足顔でクルッと後ろに振り返った彼は、爽やかな笑みに戻り、唇に指を立て「しー」と唇を動かす。

すると、騒いでいたお客さんはすぐに静かになった。

頬を赤くしたまま、怖くて後ろを見れない私は、彼の横顔を見ているだけ…