「それで、今更何のようなの?」

「俺たち寄りを戻さないか?」

「物分かりのいい彼女がよかったんじゃなかったの?」

「…俺にはやっぱり愛梨が一番だって気がついたんだ。俺ならお前の望む物を与えてやれる。あの男といたって傷つくだけだぞ。神崎の息子なんてやめておけ…」

そこまで知っていることに驚いた。

「あなたに傷つけられた時は、しがみつくほど好きじゃなかったんだって、彼と出会って気がついたわ。私は、彼に傷つけられても離れたくない。離れられない。宏人と寄りを戻すなんて絶対にないから」

苦々しく顔を歪めた宏人

「はっきり言ってくれるな…はっきり振られたお礼に忠告してやるよ。…あいつが神崎の息子に執着している以上、お前の存在は邪魔らしい。お前と絶対に寄りを戻せって詰め寄るぐらい必死になってる。俺と寄りを戻さないって言うなら、周辺に気をつけろよ」

立ち上がって帰ろうとする宏人に

「あいつってだれ?」

「あの日、会ってるだろう」

そう言った彼は「もう会うこともないな」と言って帰っていった。

宏人の体にしなだれていたあの人が、透さんに執着しているってことだろうか?どういうことなのかわからないまま、仕事を終えた足で[lodge]に向かった。