「明智君、これ返すから取りに来て」
映司は自分のブースから出る気力もない。
すると、明智君がホットコーヒーを淹れて持ってきてくれた。
映司は明智君に惚れそうになる。
世間にはバイセクシャルとして通っている映司は、確かに男に惚れる事も多々あった。
でも、最近は、男にも女にも惚れない。
恋愛というものに興味がないというか、真剣に誰かを愛する行為を体と頭が拒否しているというか、自由がいいと映司の本能が叫んでいた。
「映司さん、ソフィアは何て言ってました?」
映司は明智君からコーヒーを受け取ると、大げさにうなだれた。
「その大和撫子に、手だけは絶対に出しちゃダメってさ。
いやいや、俺もその気はないよ。
そんな雛飾りのおひな様みたいな子に、手を出す勇気も気力もありません」
明智君は声を出して笑った。



