そして、それが重要な仕事の関係であっても、EOCの人間は、奢らせないし接待も受けない欧米スタイルを貫いている。
それは、企業間では暗黙のルールで、こちらが奢る事はあっても奢られる事は一度もないし受けた事もなかった。

それなのに、こんな潰れかけている団体の咲子が俺に奢ろうなんて…

映司は優しく咲子の手を握った。
そして、ちょっとだけ咲子を抱きしめる。


「咲子ちゃん、気持ちだけで嬉しいよ。
実は、EOCの会社は外資系の会社だから、そんな接待みたいな事は不必要なんだ。
咲子ちゃんのところに限ってなわけじゃない。
全ての会社において、EOCの人間は皆そうだよ。
奢るけど奢らせない。

だから、気持ちだけ受け取るね。
社長のソフィアにもそう伝えとくよ」


映司は咲子の自尊心を傷つけぬよう細心の注意を払って、優しくそう伝えた。
そして、抱きしめている咲子を必死の思いで元に戻す。