咲子は映司に肩を抱かれて舞い上がってしまっていたせいで、このお店の状況を把握できていなかった。
でも、映司のその一言で、咲子はハッと我に返った。
このお店、たぶん、超、超一流のフレンチレストランに違いない。
お店の雰囲気からもうセレブ感満載で、咲子の許容範囲を超えている。
世間から見たらお嬢様として育ってきたけれど、私の生活はいたって質素そのものだった。
それはおじい様の教育理念で、女の子は贅沢は覚えなくていいというもの。
嫁いだ先でどういうレベルにも順応できるように、中身をしっかり磨きなさいというものだった。
咲子は自分の財布の中身を、頭の中で確認する。
…ああ、どうか足りますように。
映司は、この日のために、一番眺めのいい個室を予約していた。
この店は、アバンクールヒルズTOKYOに入っているどの店よりも、店のクオリティにロケーション、そして料理も全てが最高級だ。
咲子とのランチにこれほどまで気合を入れる自分もどうかと思ったが、でも、咲子に喜んでもらいたい。



