「咲子様、いや、咲子さん、お店に向かいましょう。
急がなきゃ、遅れてしまう。
あの、それと、呼び方って、どういう風に呼んだらいいかな?」
咲子さんは嫌だ。
先に明智君に呼ばれてしまったものは、俺にとっては屈辱でしかない。
というか、バカか、俺は…
映司は咲子の手を取って歩き出した。
ちゃんと捕まえておかないとまた迷子になりそうだし、それに、咲子の頭の植え付けられた明智君の記憶をさっさと俺のものに変換したいから。
「あの…
呼び方は何でもいいです…
堀江様が呼びやすい感じで」
映司は手を握ったまま、超高層階専用のエレベーターに乗り込む。
咲子のドキドキが映司にも聞こえるように、その空間に二人っきりだった。
「じゃ、咲ちゃんでいい?
それとも咲子ちゃん?
俺はちゃん付けで呼びたいな」



