映司は精一杯の作り笑顔で二人に応じた。
明智君には、無言の圧力でさっさと消えろと目で合図する。
「あ、じゃあ、僕はこれで失礼します…」
明智君は急によそよそしく頭を下げた。
「明智さん、あの、後でお礼をさせていただいてよろしいですか?
本当に助かりました。
ありがとうございます」
明智君は映司の方をちらっと見る。
「お礼なんて大丈夫ですよ。
当たり前の事をしただけですから」
明智君に代わり映司がはっきりとその申し出を断った。
目では早く行け!と明智君を威嚇しながら。
映司は咲子が明智君を見送る目にも嫉妬してしまう。
というか、嫉妬という言葉の意味を初めて体感した。
今の俺は嫉妬と自制心で天秤にかけたら、かなりのふり幅で嫉妬が勝ってしまっている。
何だか分からないこのふわふわした気持ちに、今の段階でぐったり疲れている俺がいた。



