勝気な性格の映司は、自分の立場を優位にしておきたい。
咲子との結婚と仕事は全く別のものだが、でも、宗一と同じ土俵に居るという事が大切だと思っている。
でも、こういう状況のさじ加減が今一つ分からない。
咲子の父親でなければ、もっと、打ちのめすやり方があるのだけれど。
でも、映司は清々しい笑顔で深々と頭を下げた。
今のこの瞬間に、対抗心は必要ないと思ったから。
「僕は、咲子さんとの結婚を希望しています。
いや、希望というより、結婚する事は間違いありません。
ただ、あなたと身内になるのか、ならないか、それだけの話になってくると思いますが」
映司はそう言うと、もう一度、宗一の顔を見た。
宗一は何ひとつ表情を変えずに、映司の視線から逃げる事はしない。



