「映司さん、どうしましょう。
このマンションにもう住めない。
お父様は有言実行の人間です。
明日にはこの部屋は、本当に空っぽになってしまう」
咲子は自分のマンションに入ると、そう言いながらソファに座り込んでしまった。
この一人暮らしだけが、唯一の自分の居場所だった。
そんな大切な居場所が、明日にはなくなってしまう。
頑固な父が簡単には首を縦に振らない事は分かっていた。
だから、咲子は何度も実家に通って許しを得ようと思っていた。
それでもダメなら、本気で七条家とは縁を切ろうと。
でも、父も本気だった。
何が何でも咲子の皇室との縁談を棒に振るつもりはない。
それが、確証された約束じゃなくても…
「咲子ちゃん、とりあえず、三日分くらいの着替えを準備してほしい。
この家がどうなるかは明日にならなきゃ分からないけど、でも、もしこの家がなくなっても大丈夫なように、俺が何とかする」



