イケメンエリート、はじめての純愛⁇



咲子は振り返って宗一を睨んだ。


「嫌です。
そんな急に引っ越しなんて」


「それが嫌なら、この人と別れる事。
この方が立派なのは、お母さまから聞いてちゃんと知っているよ。
でも、咲子の結婚相手じゃない。
それは咲子自身が一番分かっているだろう?」


咲子はまだ宗一を睨んでいる。
でも、その勢いはどんどんしぼんでいくのが分かった。
映司は、咲子を鳥かごの中から解放させるには相当な知恵と労力が必要だとひしひしと実感した。

でも、負けるわけにはいかない。
というより、俺が負けるわけがない。

さっきまでの咲子の両親に対する恐怖心は、あっという間にどこかへ消えた。
この名家にたくさんの決まりがあるとしても、でも、もうその規則に縛られる年齢ではない。
もちろん、それは咲子の事で、そして俺にもいえる事だ。

でも、だからこそ、今日はこのへんで帰った方がいい。
この凝り固まった考えの家族に、想像もしないエキスの入った一石を投じた。
今夜は、家族で、この一石の意味を考えてもらうしかない。