「あの…
今日は突然お邪魔してしまい、本当にすみませんでした。
また出直してきます。
でも、一つだけ言わせてください。
咲子さんに本物の幸せを与える事ができるのは、僕しかいないと自負しています」
で、いくらお金を積めば納得できるんだ?
なんて心の言葉は口には出せない。
お金で解決できるのならいくらでも積んでやるよ、なんてそんな事も絶対に言わない。
「今日はこれで失礼します。
でも、また、近いうちに伺います」
映司はそう言うと、隣でしくしく泣いている咲子の手を取った。
そして、二人でリビングから立ち去ろうとした時、隕石並みに頭の固い大魔王が本性を現した。
「咲子、一人暮らしは今夜でおしまいだ。
明日にはこの家へ帰っておいで。
荷物は明日の昼間に業者に運んでもらうように手配する。
そんな淫らな生活をさせるために、あのマンションに住まわせたわけじゃない。
何なら仕事まで取り上げるつもりだ。
それが嫌なら明日にはちゃんと家へ帰ってくる事、いいね」



