「咲子ちゃんと出会う前の俺は、かなりの遊び人だったんだ。
日本に限らず世界各国に友達がいて、その国ごとに恋人がいるくらい」
「恋人…?
世界各国に?」
想像通りの咲子の反応に、映司は胸が苦しくなる。
どこまで話す事が二人にとってベストなのか考えながら、小さく頷いた。
「そう。
恋人って言っても、友達以上の関係だよ。
古臭い言葉で言えば、恋人未満みたいな。
若くでお金を持ってしまった俺は、ちょっと浮かれてたんだ。
相当、色んな事をして遊んできた。
周りの目は全く気にしない。
自分が楽しければそれでよかったから」
咲子はポカンとしている。
こんな抽象的な説明では、咲子にとっては想像もつかない世界だろう。
「でも非合法的な事はやってない。
そこらへんは、ちゃんと頭を使ってるからさ」
ますますポカンとしている咲子はゆっくりと目を閉じ、そして壁を見ながら映司に質問した。
「どういうお遊びをしたんですか?
例えば、合コンとか?」
映司はそんな咲子が愛おしくて、もう一度強く抱きしめた。
彼女の頭の辞書の中には、男女が交わる遊びは合コンという単語しかない。
合コンと言えば合コンだけど、でも、恐ろしく艶めかしい危険が伴う究極の大人の遊びで、そんな現実を咲子に見せたくもないし教えたくもなかった。
その可愛らしい合コンしか知らなくていい。



