私が入社するのは、上杉不動産会社。都内のオフィス街に十階建ての本社ビルがあり、他に北海道や大阪、沖縄に支社を構え、全国各所に営業所がある。

総従業員数約五千人。土地建物販売に賃貸、仲介斡旋業はもちろん、最近では介護業界にも進出している大手企業だ。

私が希望した部署はまさに介護事業部。全国各所に施設を建設しており、その一連の業務をすべて請け負っている部署だ。

土地選びからはじまり、どういったコンセプトの施設か、どのようなサービスを売りにするかを思案し、建設後も運営に関わっていく。

まさに私がやりたい仕事そのものだった。

もちろん上杉不動産が上杉さんの会社だということは、最初から知っていた。

うちの会社と取引があり、両親たちの親交もある。だからこそ両親が入社することを認めてくれたようなものだった。

それに上杉さんの会社に入りたいと伝えると、両親は私が上杉さんのことを好きだと勘違いして、お見合いの話を喜んで受けたようだし。

経緯はどうであれ、やっとこの六年間勉強してきたことを存分に発揮して仕事ができるかと思うと、今から楽しみで仕方なかった。