それにやり取りを始めてから一度も会っていないけど、上杉さんのことを少しずつ知ることができている。

好きな食べ物や嫌いな食べ物といった些細なことから、社内研修中には緊張していないか、不安はないか気遣ってくれたり、どうだったか話をきいてくれたり。そういった意外な優しい一面まで色々な彼を知ることができた。

だからといって、上杉さんのことを好きになったわけではない。

悪い人ではないし、本当に私のことを想ってくれているんだと思う。

でもやっぱりまだ私は人を好きになる気持ちがどういうものなのか、理解できていないから。
優しくされるたびに、彼の気持ちに応えられないのだから申し訳なく思う時もある。

そんなことを考えながらメッセージ文を目で追う。

【入社おめでとう。そしてようこそ我が社へ。これからは会社でも麻衣子に会えるかと思うと嬉しいよ】

「会社でも会えるって……。そんなわけないじゃない」