だけど素直に言えない私は、可愛げのないことを言ってしまった。

「そのたった一日が辛いんだろ? 俺、もう麻衣子ナシでは眠れないかも」

「なっ……!?」

甘い言葉に声を荒らげると、上杉さんはクスリと笑った後、そっとキスを落とした。
一瞬の出来事に瞼を閉じることもできなかった。

「いってくるよ。いい子でお留守番してろよ?」

小さな子供に言うようなことを口にすると、最後に私の頭を撫でて彼は出掛けていった。

しばし玄関先で甘い余韻に酔いしれる。

最初はキスするたびにドキドキして胸が苦しくなって仕方なかったのに、慣れたというのだろうか……。
もっとキスしてほしいと願ってしまうことがある。

そっとキスが落とされた唇を撫でた。

さっきのキスを思い出すと……だめだ、恥ずかしい。上杉さんってば、ナチュラルにキスをしてくるんだもの。

いつか毎日こうして玄関先で彼のことを送り出す日がくるのかな? ……ううん、そんな日がきてほしいな。

上杉さんとの未来を思い描いていると、時間が経っていたことに気づく。

「あ、会社っ……!」

慌てて戸締りをして私も会社に向かった。