だけど「麻衣子のこと、大切にしたいから」と言う彼とはキス止まり。だけど初心者の私には、それだけでいっぱいいっぱいだった。
こうして甘えるようなスキンシップにも、いまだに慣れない。

「上杉さん、そろそろ起きないと遅刻しますよ?」

やんわり彼から離れようとしたけれど、さらに強い力で抱きしめられてしまった。

「大丈夫、あと少しだけ……」

そう言ってすり寄ってくる彼に、胸をキュンとさせられる。

一緒に暮らし始めて新たな一面を垣間見た。朝が弱いのは知っていたけど、意外と甘えたがり。そのギャップに心臓を鷲掴みにされている。

それと料理はもちろん、家事全般もできる。……以前、入社式の時に真理愛が言っていたように、彼は噂通りの“パーフェクト”な人だった。

起床後、ふたりで朝食を用意して食べて、それぞれ出勤する準備に取り掛かる。

「寂しいな、一日会えないのは」

「なに言ってるんですか、たった一日じゃないですか」

玄関先で名残惜しそうに私を抱きしめる上杉さんは、今日から一泊出張に出る。

仕事とはわかっているけど、たった一日会えないのが正直私も寂しく思う。