挨拶をすると彼はボタンを押し、エレベーターのドアはゆっくりと閉じられていく。
笑顔で手を振る彼を最後に見てドアはパタンと閉まり、下へと降りていった。

来てもらって申し訳なく思いながらも、上杉さんが来てくれてすごく心強かった。
寂しさに襲われながら病室へと戻っていく。

静かに病室のドアを開けると、穏やかな顔でお母さんが眠っていた。
寝顔を見て安心し、ベッド脇の椅子に腰かけた。

「お母さん……ごめんね」

ベッドにもたれかかり、うつ伏せになる。

すぐ近くにお母さんの顔があって、規則正しい寝息が聞こえてくると安心できる。
本当に大事に至らなくてよかった。

上杉さんの話だと、明日の夜には出張を切り上げてお父さんが帰って来てくれると聞いた。
それまでは私がずっとお母さんのそばにいる。

「早く元気になってね」

お母さんに話したいこと、聞きたいことがたくさんあるの。私の気持ちも知ってほしいし、お母さんの気持ちも聞かせてほしい。

「今までできなかった親子喧嘩もしようね」

なんでも言い合える親子になりたい。