話を聞いても、今の上杉さんからは想像さえできない。お見合いの席で見た上杉さんたち親子は、仲睦ましかったから。

「でも大人になった今は、そういう時期も必要だったと思える。悩んで迷って葛藤して、他人に迷惑をかけて初めてわかることもあると思うから。だから今の俺がいるんだと信じたい」

力強い声で言うと、上杉さんは私の様子を窺う。

「そういうこと、麻衣子はなかったんじゃないか? ひとりで抱え込んで我慢をして、誰にぶつけることもなく過ごしてきたんじゃないのか……?」

上杉さんの言う通りだ。私には、みんなが経験してきたような思春期というものがない。

中学時代はほとんどおばあちゃんの家で過ごしていたし、お父さんの仕事は忙しくて、お母さんの体調が良い日もあまりなかった。
そんな両親になにも言えるはずもなかったから。

「俺は両親と喧嘩することもあるし、暴言を吐いたこともあった。みんな当たり前のようになにかしらあった思春期が、麻衣子にはなかった。だから俺は、少しくらい反抗してワガママを言ってもいいと思うよ」

「えっ……?」

次の瞬間、上杉さんの大きな手が私の手を包み込んだ。