「告白でもなんでも勝手にすればいいじゃない。……ただこれ以上、上杉部長を心配させたり、困らせるようなことはしないでください」

私を見ることなく磯部さんは化粧室から出ていった。
次第に遠退いていく足音を聞きながら、茫然と立ち尽くしてしまう。

後悔してほしくない一心だったけど、私……余計なことを言ってしまったかもしれない。
それに私は、上杉さんを想う気持ちで彼女に勝つことができるのだろうか。

磯部さんは自分のことより、常に上杉さんのことを考えている。
その証拠にさっきだって彼を心配させたり、困らせるようなことはしないでくださいって言ってた。

普通は言えないよね、そんなこと。私だって自分のことばっかりだったもの。

でも上杉さんへの気持ちでは、負けたくない。そのためにも強い自分になりたい。
化粧室を出てオフィスに戻る途中、上杉さんにメッセージを送った。

【今夜、同期の子と食事に行ってきます。すみませんが上杉さんも夕食は外で済ませてきてください】

当然真理愛と約束なんてしていない。これ以上、上杉さんに迷惑をかけたくないから。

仕事が終わったら、実家へ行こう。正直まだお母さんと話をするのは怖いし、私の気持ちを理解してもらえないかもしれない。

でもその時は何度も気持ちを伝えていけばいいよね。今日伝わらなくてもいいから、しっかりもう一度向き合おう。

そう心に決めてオフィスへ戻り、午後の勤務にあたった。