「磯部さんの言う通り、今の私では上杉さんに相応しくないと思います。上杉さんと一緒にいられることが嬉しくて、浮かれて彼のことまで考えることができませんでした」

磯部さんが言ってくれなかったら、私はもっと上杉さんに迷惑をかけていたと思う。

「だけどまだ、両親と向き合う勇気が出なくて……。上杉さんの仕事の邪魔をするようなことはしません。できるだけ早く気持ちの整理をつけて、彼の家から出ます。……そして両親としっかり向き合って、自分に自信をつけたら私、上杉さんに好きって告白します」

両親と向き合い、自分の気持ちを伝えられるようになったって、まだまだ私は上杉さんに相応しい人間になれないと思う。

だけど好きって気持ちは伝えたい。この先もずっと彼のそばにいることができるよう、もっともっと素敵な自分になるために努力するから。

「いつか磯部さんにも認めてもらえるような女性になります」

瞳を逸らすことなく伝えると、磯部さんは目を逸らした。そしてなにも言わず、ポーチを手にし私の横を通り過ぎていく。

「待ってください!」

咄嗟に呼び止めると、磯部さんは立ち止まった。だけど振り返ることなく私に背を向けたまま。

背筋がピンと伸びた背中に向かって訴えた。